飛蚊症とは虫や黒い点が飛んでいるように
見える症状です

視野に虫や黒い点などが飛んでいるように見える状態を飛蚊症ひぶんしょうといいます。

まるでが飛んでいるように見えることから、この名前で呼ばれています。英語では浮遊物という意味のfloatersといいます。

そのほかにも透明な線状のものや糸くずに見えるものなど形や大きさは様々で、一つだけのこともあればいくつも見えることもあります。白い壁を見たときや、晴れた日の屋外など明るい場所に行ったときに自覚することが多く、目の動きに合わせて一緒について動くことも特徴です。

中年以降に症状が出る人が多いのですが、10代、20代の頃から症状を自覚する人もいます。近視の強い人には早めに出る傾向があります。

原因

飛蚊症の原因は目の中にあります。眼球の中身の大部分は硝子体しょうしたいと呼ばれる透明なゼリー状の物質でできています。目に入った光はこの硝子体を通過するので、何らかの原因で硝子体に濁りが生じると、その濁りが黒い点や糸くずのように見えてしまいます。

この硝子体の濁りには生理的なものと病気によって起こるものがあります。

1.生理的なもの(生理的飛蚊症)

通常若い時には硝子体は透明でゼリー状ですが、歳をとるにつれゼリー状から液状に変化し、その際に濁り(線維性混濁)を生じることがあります。

さらに液化が進むと硝子体は収縮し、眼球の内側の壁である網膜から剥がれていきます。これを硝子体剥離しょうしたいはくりといい、この硝子体剥離が起こる際にも硝子体に濁りが生じます。

これら生理的な変化による飛蚊症は病気ではないため放置してもかまいませんが、注意すべき点もあるので後で説明します。

2.病的なもの

飛蚊症を起こす代表的な病気は網膜剥離もうまくはくりです。まれに、硝子体剥離が起こると同時に網膜に穴が開いてしまうことがあります。この穴を網膜裂孔もうまくれっこうといいます。網膜裂孔を通して網膜の下に液化した硝子体が流入すると、網膜が眼球の壁から剥がれてしまい網膜剥離が起こります。このようにして起きた網膜剥離を裂孔原性網膜剥離れっこうげんせいもうまくはくりといいます。

自然に起こることもありますが、目をぶつけた、ボールが当たったといった目に物理的な強い力がかかったときに起こることもあります。ボクサー、格闘家、相撲取りなどに起こることが有名です。

飛蚊症を起こす病気にはそのほかに、硝子体出血や、ぶどう膜炎のような炎症による硝子体混濁があります。硝子体出血は糖尿病網膜症や網膜静脈分枝閉塞症などで起こります。急に視界に墨が流れたように見え、出血の量が多いと視力は著明に低下します。ぶどう膜炎の場合は充血や目の痛み、視力の低下といったさまざまな症状を伴うことがあります。

治療

生理的飛蚊症は特に治療する必要はありません。飛蚊症は完全に消えることはありませんが、徐々に慣れてくるため次第に気にならなくなります。ふとした瞬間や白い壁、青空などを見たときに自覚することが多いようです。

病気によって起こる飛蚊症では、原因となっている病気の治療が必要です。

硝子体剥離だけであれば放置してもかまいませんが、網膜裂孔や網膜剥離は治療が必要です。網膜裂孔が見つかった場合は、網膜剥離に進行するのを防ぐためレーザー治療(網膜光凝固術)が行われます。ただしレーザー治療をしても網膜剥離が起きてしまうことが少なからずあります。

網膜剥離に対しては手術(硝子体手術、バックリング術)が行われます。網膜剥離は放置すると失明に至る可能性もある恐ろしい病気です。また、網膜剥離が進行して視力低下を起こしてしまうと、手術で網膜剥離が治ったあとも視力が完全には元に戻らないこともあります。進行する前に発見して、治療を行うことが重要です。

飛蚊症のほとんどは生理的なものですが、自分で判断せず一度眼科を受診することをおすすめします。

飛蚊症を自覚したら

初めて飛蚊症を自覚したときは、それが生理的なものか、病気によるものかをはっきりさせるために眼科を受診しましょう。特に次のような場合は注意が必要です。

飛蚊症が急に増悪した(黒い点の数が急に増えた、範囲が広がった)
飛蚊症だけでなく、視野欠損も生じた(視野の一部が欠けて見えなくなった)
目をぶつけた後から飛蚊症が現れた

このような症状が出た場合は、網膜裂孔や網膜剥離を生じている可能性があります。早急に眼科を受診してください。

眼科では散瞳薬を点眼し、瞳孔を開いてから眼底検査を行います。瞳孔が開いた状態では普段よりたくさん光が目の中に入るため、まぶしく物が見えにくくなります。通常、この散瞳薬の効果は 4,5時間続くので注意してください。散瞳後の運転は危険です。車やバイクでは受診しないようにしましょう。

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