目の見え方がおかしいときの原因は?
よくある病気とは
見え方や視野 の異常を引き起こす病気はたくさんあります。
症状や原因はさまざまですが、緊急に治療が必要な病気もあるので注意が必要です。特に
ここでは見え方や視野が急に変化する病気を中心に眼科外来でよく遭遇する以下の病気について見ていきたいと思います。
網膜動脈閉塞症
閉塞した動脈の場所により、網膜中心動脈閉塞症と
網膜中心動脈閉塞症は突然の急激な視力低下が特徴です。多くの場合、矯正視力で0.01以下に落ちてしまいます。視野が暗くなり光がかろうじて分かる程度にまで見えなくなることもあります。
網膜動脈分枝閉塞症では通常、視野の一部が見えにくくなったり、欠損したりします。
網膜動脈閉塞症は眼科の救急疾患の中でも特に緊急性が高い病気です。
1.原因
血栓や
中年以降では動脈硬化、若年者では
2.治療
視力の予後は不良です。網膜の血液循環が40分止まると網膜の細胞の障害が始まってしまうといわれています。発症1、2時間以内であれば視力が改善する可能性はあるので、できるだけ早く眼科を受診してください。
緑内障発作
緑内障発作は失明につながる非常に恐ろしい病気です。緑内障発作では急激な
緑内障発作では充血や目のかすみ、目の痛みだけでなく、眼圧上昇により頭痛や吐き気などの症状も起こります。
1.原因
相対的瞳孔ブロックとプラトー
相対的瞳孔ブロックとは、
2.治療
救急疾患なので休日や夜中であっても、大学病院など救急外来をやっている眼科を探して受診してください。早期に適切な治療を行わないと視神経に不可逆的なダメージを与えてしまいます。
治療は原因となっている瞳孔ブロックを解除し、眼圧を正常に戻すことです。まずは点眼や点滴で治療しますが、レーザー治療や手術が必要になることもあります。
網膜剥離
網膜剥離とは網膜下に液体が貯留し、網膜が眼球の壁から
一般的に網膜剥離というと、ほとんどの場合は裂孔原性網膜剥離を指します。ここでは裂孔原性網膜剥離について詳しく説明します。
裂孔原性網膜剥離は毎年1万人に1人程度の割合で発症するといわれています。近視の強い人やアトピー性皮膚炎のある人などは、他の人よりも起こりやすくなります。
網膜剥離が起こると、剥がれた網膜の範囲に応じて視野が欠けたり、見えにくくなったりします。またそれらの症状が生じる前に、
1.原因
裂孔原性網膜剥離は、名前の通り網膜に開いた穴である網膜裂孔や網膜円孔が原因で起こります。
若年者では多くの場合、格子状変性と呼ばれる網膜が変性した部分に網膜円孔が生じ、そこから網膜剥離が起こります。
中年以降は
眼球の中身の大部分は硝子体という透明なゼリー状の物質です。硝子体は目の内側の壁である網膜にぴったりと張り付いていますが、加齢ともに変性、萎縮して網膜から剥がれていきます。この現象を硝子体剥離といいます。まれですが硝子体剥離が起こると同時に網膜が裂けてしまうことがあります。この裂け目が網膜裂孔です。網膜裂孔を通して網膜の下に液化した硝子体が流入すると、網膜剥離が起こります。目をぶつけた、ボールが当たったなど、目に物理的な強い力がかかったときに生じることもあり、ボクサーや格闘家、相撲取りなどに起こることが有名です。
2.治療
網膜裂孔と網膜剥離は治療が必要です。網膜裂孔が見つかった場合は、網膜剥離に進行するのを防ぐためレーザー治療(網膜光凝固術)が行われます。ただしレーザー治療をしても網膜剥離が起きてしまうことが少なからずあります。
網膜剥離に対しては手術(硝子体手術、バックリング術)が行われます。網膜剥離は放置すると失明に至る可能性もある恐ろしい病気です。また、網膜剥離が進行して視力低下を起こしてしまうと、手術で網膜剥離が治ったあとも視力が完全には元に戻らないこともあります。進行する前に発見して、治療を行うことが重要です。
飛蚊症や光視症が急に起こったときは、念のため眼科を受診しましょう。視野が欠けてきた場合は、早急に眼科を受診してください。網膜剥離の場合には、大学病院などの専門機関に紹介になります。
一過性黒内障
数秒から数十分の間、片眼が見えなくなる症状を一過性黒内障といいます。時間がたつと元通り見えるようになることが特徴です。一過性脳虚血発作に含まれ、
1.原因
動脈硬化や心疾患、血管炎などが原因になります。
特に多いのは動脈硬化による内頚動脈狭窄です。内頚動脈狭窄で生じた血栓が眼動脈を閉塞することで起こるといわれています。
2.治療
原因を検索し、治療することが大切です。
一過性黒内障が起きた人は近いうちに脳梗塞を起こす危険があります。すぐに内科や脳神経外科を受診しましょう。
脳梗塞
脳梗塞では、
1.原因
脳梗塞は脳の血管が詰まることによって起こります。高血圧や糖尿病、高脂血症などによる動脈硬化が原因になります。また、心臓にできた血栓が脳の血管に詰まって起こることもあります。
2.治療
治療がうまくいくゴールデンタイムがあるので、できるだけ早く内科、または脳神経外科を受診してください。救急疾患なので時間外の場合には救急科を受診しましょう。
脳梗塞のリスクを減らすためには、高血圧や糖尿病、高脂血症といった病気を早期に見つけ、きちんとした治療を継続することが大切です。
視神経炎
視神経の炎症により片眼または両眼の急な視力低下が起こります。視野異常や
視神経炎では視力低下が起こる前に、目の奥の痛みや目を動かした時の痛みを感じることがあります。
1.原因
原因は不明です。ウイルス感染や自己抗体が関係していると考えられています。
2.治療
自然治癒の可能性がある病気ですが、ステロイド療法を行うこともあります。
虚血性視神経症
視神経の虚血により視力低下や下方の視野欠損が生じます。
高齢者に多く、失明の原因になる非常に怖い病気です。
1.原因
高血圧や高脂血症、糖尿病などが関係していると考えられています。
側頭動脈炎に伴って起きるものもあります。
2.治療
側頭動脈炎に伴って起きるものでは、早急にステロイド療法を行います。
その他のものでは、まだ有効な治療法が確立されていません。
硝子体出血
硝子体は眼球の中身の大部分を占める透明なゼリー状の物質です。硝子体中に出血が波及すると急に視野に
1.原因
糖尿病網膜症や網膜静脈分枝閉塞症、加齢黄斑変性、裂孔原性網膜剥離などの病気で起こります。
生理的な硝子体剥離に伴って起こることもあります。
2.治療
まずは出血が自然に吸収されるのを待ちます。
裂孔原性網膜剥離に伴う場合や、出血がなかなか引かない場合は手術を行います。
加齢黄斑変性
加齢黄斑変性の発症率は欧米に比べるとまだ半分程度ですが、近年の高齢化や食生活の変化により徐々に増えてきています。
加齢黄斑変性は、50歳以上で網膜の中心窩を中心に半径3000μmに認める加齢に伴う黄斑部の異常、と定義されています。加齢黄斑変性には前駆病変があり、そこから
滲出型加齢黄斑変性では、脈絡膜から異常な血管が網膜に侵入することにより変視症や視力低下、中心暗点などの重篤な症状が引き起こされます。
1.原因
加齢黄斑変性の原因はさまざまであり、多因子疾患と考えられています。遺伝的要因と環境要因が混在しています。
原因として以下のものが挙げられます。
- (1)加齢
- (2)黄斑の
脆弱性 - (3)たばこなどの環境要因
- (4)食生活による要因(抗酸化物質の摂取など)
- (5)血管内皮増殖因子(VEGF)の関与
- (6)遺伝的要因
2.治療
現在、滲出型加齢黄斑変性の治療は血管内皮増殖因子(VEGF)を抑えることに重点が置かれています。抗VEGF療法として硝子体内注射が行われています。
最近ではiPS細胞を用いた最先端治療が臨床研究として進められています。
閃輝暗点
突然ギザギザとした光が見え始め、数分から数十分続きます。色のついた光が見えたり、視野の一部が見えなくなったりすることもあります。このような症状を閃輝暗点といいます。10代から30代の若い人に多く、しばしば閃輝暗点に続いて
典型的な閃輝暗点では、ギザギザ、ジグザグとした光が視野の中心付近から左右どちらかに広がります。視野の中心部はぼやけて見えません。20分前後で光は消え、その後に拍動性の頭痛が出現し数時間続きます。
1.原因
これらの症状は脳の血管が一時的にけいれんすることが原因で、目に異常はありません。過労やストレス、睡眠不足などが誘因になるといわれています。月に数回起こることもあれば、年に1回程度のこともあります。
2.治療
まずは脳の病気がないか調べることが重要です。原因があればその治療を行います。
片頭痛の前兆で起こるものについては、次の項目を参考にしてください。
3.片頭痛
片頭痛は発作性に頭痛を繰り返す疾患です。10代、20代の若い時期から起こり、男性よりも女性に多くみられます。命にかかわるような病気ではありませんが、日常生活への影響は大きいとされています。
片頭痛という名前の通り、片側性でズキズキと脈打つような拍動性の頭痛が典型的ですが、両側性や非拍動性の場合も多くあります。また、片頭痛には前兆のない片頭痛と前兆のある片頭痛があり、前兆のある片頭痛の代表的な前兆が閃輝暗点です。
1.原因
片頭痛の起こるメカニズムには諸説あり完全には解明されていません。疲労やストレス、睡眠不足、睡眠過多などが誘因になり、女性では月経とも関連しています。
2.治療
片頭痛の治療には頭痛発作の症状を和らげる急性期治療と、頭痛発作を予防する予防的治療があります。
急性期治療では、鎮痛剤として軽度の頭痛発作には非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、中等度から重症の発作にはトリプタン製剤を用いることが多くなっています。また片頭痛に悪心、嘔吐を伴う際には制吐薬も併用されます。
発作の頻度が高い場合、既往や副作用により鎮痛剤が使えない場合には予防的治療も行われます。予防薬には抗てんかん薬や抗うつ薬などがあります。